赤旗7/8(月)に武田砂鉄&笙野頼子対談記事

しんぶん赤旗 2019年7月8日(月)8面に対談シリーズ「さあ、文学で戦争を止めよう」が掲載されました。
笙野さんが文学で戦争を止めるべく、文学者と連帯していく対談シリーズも4回目になりました。
今回は武田砂鉄さん。8面ぜんぶ対談ですよ!
第1弾 2018/08/17 木村紅美さん
第2弾 2019/01/07 島本理生さん
第3弾 2019/04/29 多和田葉子さん
そして第4弾は、「新潮45」や幻冬舎・見城徹を批判する書き手・武田砂鉄さんとの対談。
著書『紋切型社会』や『日本の気配』から政治家の失言の話から、権力の代弁者の話に。
代弁者をそろえ言葉持たぬ政権
武田 政界でも芸能界でも文学の世界でも、何かを論じようとした時に、対象に近い書き手が好まれる傾向がありますね。「実は安倍さんってこういう人なんだよ」と。そんなことはどうでもいい。安倍さんや麻生さんとこんなに仲がいいんだよ、と匂わせる「論客」が、政界の内部に迫る人物として持ち上げられる。当然、権力側は重宝します。どんどん近づいてもらえば、批判しなくなりますから。近さを売りにする書き手が並べば、権力側はラクチンなのです。

笙野 それこそ国事さえも閉じた世界です。国会とは何か? 言葉です。議論と、その記録です。しかし今や国会では、問題になりそうなことを記録しない。戦争法も強行採決のどさくさに紛れて速記録がない。つまり、採決や可決だって無いも同然なのではないか。自衛隊日報問題、森友・加計学園問題でも記録の隠蔽、廃棄、改ざんが立て続けに起こるから、前の問題が隠れてしまう。

武田 今の権力者を見ていると、言葉を持たないほうが権力を維持できるのではないかと思えてくる。百田尚樹、ケント・ギルバート、松本人志、見城徹など代弁者をそろえればいい。扇動する言葉を使うのが上手な彼らに、言葉を委託していく。自分の言葉を持たない政権、周囲の応援団に肉付けしてもらっているのかもしれません。
確かに。政権の具体的政策より、外注の代弁者の意見ばかり耳に入ってくる気がします。講談社「ViVi」と自民党のコラボもありましたし。

武田 笙野さんの作品は怒りが表面化していますよね。怒りを持ち続け、繰り返し表明することが必要です。秘密保護法、安保法制、共謀罪、TPPと、「問題が生じる→反対の声が上がる→下火になる→まだやってんの? と言われる→忘れられる→消える」という反復で、強行される。この繰り返しでいいのか。

笙野 ともかくメディアは流行を追い、肝心のことは報道しない。でも文学は報道する。「文学に政治を持ち込むな」というけど、その時の怒りや目の前の問題をやり過ごしたら、大切な内面の実感がなくなってしまう。

武田 「文学に政治を持ち込むな」という言説自体が極めて政治的です。あらゆる言動は政治的です。すべてに対して「一理あるよね、どっちもどっちだよね」と言い、怒らず、結果的に権力側に立って仲介役を担う学者や文学者が最近多い。いら立ちます。
「どっちもどっちだよね」は本当に悪質。と言いつつSNSをやっていると目の前の話題に気を取られて、問題を忘れがち…反省。

笙野 私は、なぜ怒ってるんだとよく言われます。でも説明すれば本一冊分ですよ。結局怒ってるから悪い女だろうって。でもこれ、フェミニズムというより「自尊」なんですね。自分個人の尊厳や共感した他者のためにがんばるだけ。個人の言語をぶつけてみるだけ。理論よりも現状優先ですしね。

武田 今、その「自尊」を公言してはならないという圧力が強まっています。私はこう思いましたと言うと、あなたのことなんて聞いてませんからと返ってくる。「自尊」なんか取り外して、この場の総意にふさわしい言葉を発しなさいと。それが社会のマナーとされ、個人の怒りや感情を吐き出す場所がなくなってしまうんですね。
なんかその圧力、わかります。デモに対してうるさいからやめろとか、他者への尊重が蔑ろにされている感があります。

笙野 参院選が始まりましたが、どうかこの「自尊」の一票を、個人が持つ唯一の力をおろそかにしないでほしい。与党に対抗する未来にかけてください。例えば沖縄の人たちはあきらめずに選挙に行き続けて、県知事選でも衆院補選でも辺野古新基地建設反対の玉城デニーさんたちが勝ちました。このたたかいに私たちもついてゆけば、同じ現象を起こせるはず。女性もどうか希望を失わないで! 選挙に行きましょう!
沖縄では粘り強く選挙で辺野古基地反対を表明し続けています。私も夏バテに負けずに投票しに行くぞー。

武田さんのTシャツに注目している人もいたり。
「Larks' Tongues in Aspic」の直訳は「雲雀の舌のゼリー寄せ」なんだって。囀る舌…。

市議会議員の金子幸弘さんのLine記事で対談が紹介されてます。
金子幸弘 | LINE TIMELINE

しかし、今年は蒸し暑さで寝不足でぼーっとしていて、対談の記事もすっかり遅くなってしまいました。
武田さんが元編集者で「文芸誌では笙野さんの特集を担当」された事があるとは知らなかったなー。

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