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「群像」12月号に笙野頼子「質屋七回ワクチン二回」掲載

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「群像」2021年12月号に、笙野頼子さんの新作小説「質屋七回ワクチン二回」が掲載されました。 創刊75周年記念号第3弾「創作饗宴」にある42pの短編(or中編?)。 コロナ禍から今年の10月までのワクチン二回済ませるサバイバルなお話です。 ・ 群像公式サイト ・ Amazon: 群像 2021年12月号 ・ 楽天ブックス: 群像 2021年12月号 馬場秀和ブログにさっそく感想がまとめられています。 『質屋七回ワクチン二回』(笙野頼子)(「群像」2021年12月号掲載) 確かに過去作と比べ、どうにも暗さがありますね。 お金がない。毎月が危機。 「静流」連載終了から文芸誌に掲載されず、収入がない。 前借りや質屋で換金してしのぐ。コロナ禍のギリギリ生活は、三十年前の「増殖商店街」的貧乏と違って...。 金がなかったらまず時間が止まってしまう。支払うまで何も出来ない。誰にも連絡できないし気軽に現状の説明も出来ない。どこにも出ていけない。誰かに説明すると相手も気の毒に黙るしかない。対処しようがないもの。電車なんか乗ったらたちまちスイカの補充が要るし、御中元してないのに電話できないし。p223 (ここでちょっと笑ってしまいました。お中元…いる?) だいたい自分だっていつ死ぬか判らない。なのに肉体まで吝嗇になっている。だってまだ備蓄のあるクナイプが高いと思いはじめたらうざくなって半分に薄めると、それで 皮膚がほっとする。貧乏とは何だろう。 もう死ぬかもしれないのにケチのまま死ぬ事だ。 残っているおいしいものを食べようとしていきなり吐き気がして来る事。 自分の健全な欲望というか生きている肉体を罰したくなっている。 が、........。 しかしこの危機の以前私はどうすれば良かったのか、何か対策の方法があったであろうか。結局は時間も世の中も止まったまま、自分だけがダメな人として輪の外にいる。 疎外感。質屋を往復する生活に「居場所もなかった」的にぐるぐるして出口がない。その中でも家のお宝から感じる伯母さんの愛。新型コロナワクチン二回接種への不安と副反応による体調悪化。さらに飼い猫ピジョンさんが血尿?最後までハラハラさせられます。 章のタイトルも面白い。 1 華麗なる滑り降り 2 絢爛たる催促状 3 流麗かも? 歩行 4 悠久の自己責任