週刊エコノミスト01/22『ウラミズモ奴隷選挙』、図書新聞01/19に「返信を、待っていた」

週刊エコノミストの読書日記「現代社会を笑い撃つユーモアと孤高の知性」でブレイディみかこさんが『ウラミズモ奴隷選挙』の感想を書かれています。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20190122/se1/00m/020/011000c
紙版「週刊エコノミスト」2019/01/22号にも掲載されました。
前書きの一文の真摯さに、私は心を撃ち抜かれた。
「さあ、芸術とは何だろう。「そこに危険の予告や仲間への愛、生命を感じて、それを生きるための磁石や或いは、糧にするもの」か、それとも「よーく研究して、公平中立に、すみからすみまで理解する」ものか。」
「政治とは」「社会とは」と漢字だらけの堅苦しい論考を書くあまたの批評家より、笙野氏の執筆に対する矜持のほうが実はよっぽど硬質である。それでいて「Let me entertain you」のサービス精神を忘れない書きぶりは、本当に日本ではレアな作家だと思う。
同感です。真摯な社会批判だけでなく、読者へのサービス精神で貫かれてます。見開きのエッセイですら全力投球で面白いですからね。
合わせて、オーウェン・ジョーンズ『エスタブリッシュメント』も紹介しています。
THE BRADY BLOGでも、『エスタブリッシュメント』と『ウラミズモ奴隷選挙』はシンクロ部分ありと言われてました。こちらの新刊もぜひ読みたいところ。
THE BRADY BLOG:オーウェン・ジョーンズ新刊、エコノミスト「読書日記」など

図書新聞2019/01/19号(3383号)岡和田晃<世界内戦>下の文芸時評第47回「シニシズムの連鎖を切断し、「男尊左翼」の傲慢をも退ける勇気」に笙野頼子「返信を、待っていた」(群像2019年1月)が取り上げられています。
「返信を、待っていた」はテクニカルな短編で、「三日間」や「グリーン・カルテ」といった優れた小説を残した川上亜紀への哀悼を貴重にしつつ、小説で描かれた「難病患者」としての「自然と身につけている肉体への希薄さ」を共有できないでいる語り手とのずれが、「マスコミのどこもTPPは批判できないし、五輪の批判も自動車輸出の優遇もろくに文句を言えない」現実へと敷衍される。ネットでの女叩きを目撃し、「左右のどっちが政権をとっても」女は奴隷のまま、という不安が語られる。「新潮45」のLGBT差別までもが批判的に形象化され、「どっちにしろ、どなたの足元にも、今からは地獄が来る」ことへ覚悟が促されるが、一筋の光明として、川上亜紀の詩篇『あなたとわたしの無数の人々』からの引用で締められる。
こうした複雑な構成にもかかわらず、作中で自分たちが批判されたと受け止めた者らが、SNSできわめて短絡的かつ無理筋な罵倒雑言を笙野へぶつけて「炎上」を企て、さらには同作を称賛した読者たちへ恫喝を繰り返すという事態が起きた。その行為自体が、作中で批判される、きわめて日本的な負の心性としての「男尊左翼」ーー「差別」の定義の隙間をぬって弱い者いじめを繰り返す、権力補完機構ーーの意識的・無意識的な傲慢を、見事に裏打ちしている。「返信を、待っていた」で記された「殴られたくもない、死にたくもない」という女性たちの切実な”声”を拾うのは、文学の切実な役割だが、
反安倍政権側も女性差別していては、どちらに投票しても変わらないと、女性は投票したくなくなる。それでは社会は変わらない、変えていこうという短編ですよね。
そして現代の社会的心性を描いている作品でもある。
左右のどちらも女性差別をするのは、男性社会に女性を馬鹿にする言動が組み込まれているから。
それが本当の男らしさかどうか、ジレットのCMみたく見つめ直さないと変わらないと思いますね。
https://www.youtube.com/watch?v=koPmuEyP3a0

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