web河出に笙野頼子『ウラミズモ奴隷選挙』内容紹介と著者コメント

ウラミズモ奴隷選挙
最新作『ウラミズモ奴隷選挙』発売を10/24に控えて、「web河出」に笙野頼子さんのコメントが掲載されています。
奴隷国だ!「にっほん」には奴隷しかいない! ーー笙野頼子『ウラミズモ奴隷選挙』発売迫る!!|Web河出
ウラミズモ奴隷選挙』内容紹介とあらすじ、主な登場人物の紹介まで解説。
作品の背景や世界観を押さえているので、これを読めば、初めての人も新刊が楽しめますね。
時はTPP批准、高プロ法成立、水道法の改悪から約半世紀後、舞台は世界企業の植民地となった奴隷国「にっほん」。そこは世界銀行に住む妖怪ひょうすべと、その手下にして政権与党「知と感性の野党労働者同盟(略称・知感野労)」、その党員ジュニアで構成される「NPOひょうげんがすべて(略称・ひょうすべ)」に支配されていた。女性も時にその手下となり、ひょうすべの婦人部である、「野党リベラルフェミニズム、手をつなごう男とだけ(略称・ヤリテ)」に加入して偽のフェミニズムである、イカフェミニズムで同性を苦しめていた。

かつては世界一豊かだった国、しかし愚かにもTPP批准で国家主権を失った。そのジェンダーギャップも114位からさらに底辺へ。性暴力、経済暴力、差別暴力が支配原理となり、男尊化と植民地化はとどまるところを知らぬ。少女は遊郭に送られ、農地は核廃棄物の置き場にされ、痴漢とヘイトスピーチを警察が守り、国民の75パーセントは債務の奴隷。井戸は埋め立てられ水道代は五倍、払えぬ人々は川の水を汲んで逮捕される。女性は幼女妊婦までも滅亡の危機に……。ならば? 死ぬしかないのか?

逃れよう、隣国へ! 方法は二通り。
ひとつは自力での移民や亡命、もうひとつは隣国ウラミズモへの帰属を決定する投票、奴隷選挙である。もしこの奴隷選挙に勝てばその選挙区はにっほんから離脱できる。ただしこれらで救われるのは、実は女人だけ。というのもこのウラミズはまさに女人国で、……。

旧茨城県を領土として、不意に出現した歴史浅き国。ここには危険施設の引き受けを独立条件とした黒歴史がある。しかし今では……。

TPP不参加のゆえに水と食べ物に恵まれ、国家主権は保たれ、老後も医療も無事。子供は外国の精子を買ってシングルマザーかダブルマザー(夫婦ならぬ婦婦)で産む。女性移民も受け入れ、人口は増えていた。むろんユートピアではない。監視カメラだらけの警察国家である。三百年後の男女平等を目指すと称し、男性の人権を制限していた。まず、国境からの男性侵入者を射殺、にっほんが後始末を押し付けてくる痴漢強姦犯は、国家施設「男性保護牧場」で見世物にし、その他には美男奴隷を観光資源にしている……。
ああ、にっほんは地獄、でも民主主義のない国ウラミズモは??
今から50年ほど未来の「にっほん」と女人国「ウラミズモ」のお話で、IMFの奴隷になってる「にっほん」は妖怪ひょうすべと「知感野労」「ひょうすべ」「ヤリテ」に庶民が苦しめられてるわけですね。(しかし、にっほんから移民した市川房代(市川房枝とは別人)、正規職員ではないとは…移民の待遇ひどいな)
著者コメントもしっかり載っています。
本作は一応、「だいにっほん」シリーズ、『水晶内制度』のスピンオフで、『ひょうすべの国』の続篇ともなっています。しかし、現代の日本のあり方に心を痛める方、文章を愛する方にならば、おそらくは初読みでも十分楽しめます。ただ、教科書的な文章や、マスコミ報道に、疑問を感じない方には苦痛かもしれません。
『ひょうすべの国』でもずっとTPPの危険性を訴えてきました。今はもう離脱(脱退)あるのみと思っています。巻末にはデモ参加の報告や議員に出したメールや、内閣府TPP説明会参加の体験を生かした小説も収録してあります。どうぞよろしくお願いいたします。

国を売るな! 国益渡すな! 民よ死ぬな! 奴隷になるな!

――番最後に次作の予告篇がついております。
最新作の巻末に「デモ参加の報告や議員に出したメール」「内閣府TPP説明会参加の体験を生かした小説」、「次作の予告篇」が収録されると。「次作」って何だろう。ワクワクしますね!
河出書房新社『ウラミズモ奴隷選挙』紹介ページはこちらです

このブログの人気の投稿

『蒼生2019』特集「文学とハラスメント」に笙野頼子「これ?二〇一九年蒼生の解説です」掲載(2)

更新停止のお知らせ

新刊「笙野頼子○○小説集」予約