群像10月号創作合評に「ウラミズモ奴隷選挙」&10/24書籍化

近刊情報サーチによると、10月17日24日に「ウラミズモ奴隷選挙」が書籍化されるようです。
http://comingbook.honzuki.jp/?detail=9784309027364
河出書房新社「ウラミズモ奴隷選挙」ページも。
笙野頼子『ウラミズモ奴隷選挙』でAmazonに予約ページができています。


「群像」2018年10月号の創作合評に笙野頼子「ウラミズモ奴隷選挙」が取り上げられています。
http://gunzo.kodansha.co.jp/50516/52373.html
安藤礼二・蜂飼 耳・小澤英実さんらの合評です。
丁寧なあらすじ説明があり、本作の構造が明確になって理解が進みます。
安藤 笙野さんは、ある時期から作品の一つずつをフィクションとして自立させてはいません。現実の世界と同様、自身が作り上げたフィクションの世界にも歴史が積み重ねられてゆく。書くもの全てが有機的につながりあい、全体として現実の世界を先取りし、現実の世界を転覆していく想像力の世界を一連の稀有な作品群として書き続けている作家です。p376
小澤 この作品の舞台である近未来の世界は、現実社会がデフォルメされていますが、一部の描写はデフォルメではなく、完全にシンクロしていて、過剰でもなんでもない。だからいまはデフォルメと感じるところも、来るべき未来の姿が描かれていると思えて恐ろしかったです。p379
蜂飼 作中でTPPが繰り返し批判されていたり、「ウラミズモ奴隷選挙はいきおいを増し、今では関東一円の経済特区がウラミズモの占領下になっていた」という流れがあって、笙野さんの強い想像のフィルターを通して、リアルな社会問題に対抗しようというもくろみが感じられますよね。p380
蜂飼 最後に銀鈴が書いた論文はさまざまな形態の暴力を巡ってのことで、これが中心的なモチーフになっていることは間違いないですよね。p382
・沼際の石神夫婦。去った夫が戻ってきたら息子キャラなのはなぜか
・ウラミズモに終わりの方で女装男子が出て来るのは多様性か
・にっほんに対抗しているウラミズモの在り方も暴力だと自覚的である
・奴隷選挙とオストラは表裏一体の関係
などなど様々な要素を語られていて、読み応えがありました。

図書新聞【3367号、9月15日号】岡和田晃さんの連載「〈世界内戦〉下の文芸時評」第43回「身体感覚を突き詰めて世界の全体性を記述する、リトルマガジンの出発点」に笙野頼子「ウラミズモ奴隷選挙」が取り上げられています。
http://www.toshoshimbun.com/books_newspaper/week_description.php?shinbunno=3367&syosekino=11820
その記事は公式サイトの試し読みで読めます。誰でも読めるなんて太っ腹!
評者が改めて農民文学に関心をもったのは、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)のような問題を、どう描いているかを知りたかったからだが、正面から扱うのは難しいようだ。渡辺一史『北の無人駅から』のようなノンフィクションが、数少ない例外である。しかし、そうした障壁を、あえて想像力で乗り越えようと試みたのが、笙野頼子「ウラミズモ奴隷選挙」(「文藝」)だ。選挙民が「持ち前の奴隷根性と奴隷的無能を発動し続け」た結果、自国の労働者を切り捨て巨大外資に金を流す、「ゾンビ化」したTPPの浸透により、基本的人権は制限され、あらゆる自由が剥奪された“現在=未来”を余すところなく描いている。書き続け、シミュレーションを重ねることで――寓意の域に留まらず――私たちが生きる社会の実相を、多角的かつグロテスクに提示してみせた。「全員が投資家気取り国にっほん、そこにはもう少女虐待以外の「国内産業」はない」と、男性的な権力が被害者ポジションを装いながら、もはや「強姦は強姦でない」と居直りつつ、性暴力によって弱者(少女)を蹂躙して商品化する仕組みが、あらゆる角度から徹底的に描き出され、近作でもっとも過激だろう。
まさにTPPによって搾取され奴隷同然になる将来を描き出していました。

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