「文藝」2018年秋号に新作長編「ウラミズモ奴隷選挙」掲載


7月6日発売された「文藝」2018年秋季号に、笙野頼子さんの新作長編「ウラミズモ奴隷選挙」が掲載されています。
TPP警告小説、長編420枚一挙掲載です。
植民人喰い条約 ひょうすべの国』の続編。
2016年にTPPが批准されたパラレルワールド。当然水道法改悪、種子法廃止、働き方改革は悪法化して奴隷法にまでなった世界。人口の75%が奴隷のにっほんで人々は生き残るため、国を決定する選挙でウラミズモに占領される事を選びます。最後には関東一円も占領され、九州と山口県以外は選挙で国替え。日本列島ほぼウラミズモに(但し北海道と沖縄は独立)。
語り手は、S倉の沼際に住む石神・姫宮様と男性保護牧場の展示館で長年働く市川房代。そしてウラミズモ一のエリート高校生・猫沼きぬと又尾銀鈴の語りやメールが交錯していきます。
にっほんの残虐なおんたこ痴漢強姦野郎のキモメールやひょうすべの残虐メールまで飛び出す中、誹謗中傷・妨害・セクハラ・虐待を乗り越え「奴隷選挙」に投票しウラミズモに移ったP田女子の語りには心動かされずには入られません。

TPP参議院可決後の著者近況はこちらにあります。
笙野頼子「近況ご報告その他」
4月のWeb河出:[書き下ろし短篇小説]ウラミズモ、今ここに
合わせてチェックすると理解が深まります。

さっそく、馬場秀和ブログさんの感想ができていますよ。
『ウラミズモ奴隷選挙(「文藝」2018年秋号掲載)』(笙野頼子)
『水晶内制度』やだいにっほん三部作などのつながりを押さえた解説でわかりやすいです。

ブロガーズの東條慎生さんの連作感想ツイートも。
「笙野の未来史連作は痴漢常習者のロジック――加害者が自分を被害者として暴力を正当化する論理で成立する国家を描いている。」とはおっしゃるストリートで、その論理の醜さ、悪質さを存分に描き出した作品だと思います。

「群像」2018年10月号の創作合評(安藤礼二・蜂飼 耳・小澤英実)、図書新聞9月15日号岡和田晃「〈世界内戦〉下の文芸時評」第43回に笙野頼子「ウラミズモ奴隷選挙」が取り上げられています。
群像10月号創作合評に「ウラミズモ奴隷選挙」&10/17書籍化

twitter文藝アカウントでは、笙野さんのコメントを掲載。そして「#ウラミズモに望むこと」タグで投票募集中です。
「お邪魔いたします。災害お見舞申し上げます。笙野頼子です。TPP反対!絶対に脱退!/四月、Web河出に「ウラミズモ、今ここに」を発表しました。数日前、笙野頼子資料室に近況報告UPして貰いました。そして文藝秋号が発売、「ウラミズモ奴隷選挙」一挙420枚掲載となりました。で…?
この長篇の予告と紹介やそのテーマとなるTPPについては前の二つをご覧ください。では、ここでは何を?そうですね、まずは拙作をお読みください。そして日本の未来に思いをはせつつ、では、選挙です。あなたはどっちに投票?

a)政府に騙されTPPの罠に堕ちた男尊国にっほん、経済の数字だけはトリックで上げている。国民は水も飲めず医療も崩壊、奴隷制の中、妊婦を憎んで殴る男たち、カジノの跡地には少女遊郭、国民は債務を生きて債務を死ぬ。ちなみに投票率は25%、つまり奴隷は投票に行かないから。

b)にっほんの横暴な男性から逃れて建国した女人国ウラミズモ、しかしここは恐怖の警察国家、ばかりか男性はほぼ「いない」国。観光客向けの男性保護牧場があり、選ばれた美男奴隷と見世物にされる痴漢強姦犯、しかもこの中から、女性の投票で処刑されてしまうものも。
TPPには参加してなかったので土地も水も安全。福祉も食べ物も国家主権もある。野菜はおいしいし本国なら安全。ただしセックスはまずできない。選挙教育のために政府が未成年に御馳走したり鷹揚だが、当事者意識がなければいきなり射殺される。

……そうです。どっちもディストピアです、しかし究極の選択なので。その他、刊行時書き足し及び続編の参考にいたします、ハッシュタグを使ってウラミズモに望むことをご遠慮なく。タグ荒しは次作で「報復」するかもね。
新作は今までにない「問題作」、精鋭読者の反応が不安すぎて、作者はずっと緊張してます。でもこんな時代だからね、こんな内容だよ?ほら、国、もう壊れてる。出来ること?じゃあ書くよ、止めないって。この国難終わるまで皆様どうかどうかご無事で! 笙野頼子」
私なら(b)ウラミズモに投票かな。TPP拒否して保護貿易、内需拡大、農業優先、地産地消、予防医学だし。やはり衣食住と安全な生活が確保された土地で暮らしたい。それに公的祝宴で禁酒もいいね。
#ウラミズモに望むこと、だけどコーヒーくらい好きなだけ飲みたい!たんぽぽコーヒーは不味い。自由のきかない生活でも、カフェインくらい自由に飲ませて〜。


なぜか、公式やアマゾンにも目次がないので、とりあえず新作だけ載せときますね。
<小説>
辻原登「月も隈なきは」
藤田貴大「夏毛におおわれた」
藤代泉「波に幾月」
ミヤギフトシ「ストレンジャー」
長野まゆみ「カムパネルラ版 銀河鉄道の夜」後篇
佐々木譲「関係(黒/白)」
松浦理英子「風鈴」(kindle singleで発売中)
●新連載
李龍徳「あなたが私を竹槍で突き殺す前に」第1回
木下古栗「オナニーサンダーバード藤沢」
●短期集中連載
羽田圭介「ポルシェ太郎」前篇
橋本治 落語世界文学全集「異邦人」前篇

<対談>
ファン・ジョンウン×斉藤真理子「怒りの声、絶望の想像力」
『寝ても覚めても』映画化記念 東出昌大×柴崎友香「「愛する」が始まるとき」

<特別寄稿>江南亜美子「あたらしい日本語文学の地平 温又柔・多和田葉子のいま」
連載などは公式を参照:文藝2018年秋季号
ちょっとした辞書並みに分厚くて、読んでも読んでも終わらないよ〜。

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