清水良典『文学の未来』(2)

文学の未来

清水良典『文学の未来』は「純文章宣言」から始まる。
それは小説・エッセイなどジャンルに関係なく、面白い文章かどうかで良い作品か決めようという主張(だと思う)。
たしかに最近ジャンル分けできない小説が多い。
私自身も文章が退屈だと飽きるタイプなので、読んでいて納得。

第一章では、作文に着目したコラムをまとめている。
作文から近代小説成立期から言文一致の歴史と功罪や日本国憲法の抑圧性を批判する展開は面白い。
そして世代間の文章に対するスタンスの指摘も。

第二章は近代小説の作家毎の批評。
谷崎潤一郎・内田百間・林芙美子・幸田文・井伏鱒二・吉行淳之介・島田敏雄。
最後の島田敏雄『死の棘』の解説は目から鱗。
作者の妻は創作のパートナーだったという視点から、『死の棘』島尾ミホは狂気の人ではなく神の相似形<聖ミホ>として書いているという。
これは…斬新じゃない?いますぐ読み返したくなった(けど本がみつからない…)。

第三章は現代小説の作家批評。
高橋源一郎・筒井康隆・川上弘美・赤坂真理・小川洋子・柳美里・笙野頼子の七人。
個人的読後感から段々と深い洞察に入っていくスタイルで読んでいなくても楽しめる。
柳美里はモデルの人権侵害として一部削除されて出版された『石を泳ぐ魚』を取りあげている。オリジナルと改訂版と比較し、オリジナルの重要なメタファーが禁じられ作品性が反対になっていることを指摘する。
その次が笙野頼子とくると、清水良典のスタンスが伝わってくるような気がするのだ。



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