週刊読書人9/22号と赤旗9/17(日)に「猫キッチン荒神」書評

・書評専門紙「週刊読書人」2017年9月22日号(3207号)5面に友田健太郎さんの『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』書評が掲載されました。
その書評が9/18付で「週刊読書人ウェブ」に全文公開されました。太っ腹ですね!
友田健太郎「静謐な印象の読後感 多くの女性たちに送る連帯のあいさつ」『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』書評|週刊読書人ウェブ
圧巻は作者が幼いころからの家族との生活を振り返る場面である。かつて女性として初めて共学化した国立大学に入学した母、会社を立ち上げ成功させた父、今は名医となっている弟。作者については言うまでもない。一人ひとりが人並み外れたものを持つ家族が集う食卓は、それゆえにか、いたたまれないような自我の衝突の場となっている。

中でも母親の存在は深い痛ましさを感じさせる。大きな庄屋の跡取りの座を捨てて父親と結婚した母親は、料理に打ち込み、当時珍しかった西洋料理を自力で再現し、地域の主婦に広めていた。誇り高く常に上から目線でものを言い、しかし他人には慕われていた。そんな母の作る手の込んだ料理を常に否定する父。両親の狭間にあって緊張を強いられ、双方から感情をぶつけられる作者。語られるのは一つの家族の歴史ではあるが、戦後日本の家庭が女性にとってどういうものだったかを鮮やかに照らし出している。

父親が留守のとき、母親は父親が嫌うハンバーグなどを作ってくれたという。「女が閉じ込められる場所とされる台所」で、母親は作者に、二次方程式から古い映画の粗筋まで、あらゆる知識を授けてもくれた。「ここで生まれて消えていくかけがえのない感動、いや、消えない、私が覚えているから」。生命の糧が日々作りだされる台所。多くの夢をはぐくみ、封じ込めもする台所。親が子に、多くを伝える台所、同時に、一人が一人でいることもできる台所。

多くの女性が台所で過ごした時間、積み重ねてきた思いは、数字に換算することはできない。だからこそ作者は、台所をグローバル資本主義への抵抗の拠点として位置づける。それは私的な領域に封じ込められて生きる多くの女性たちに作者が送る連帯のあいさつなのだ。
確かに金毘羅の家族は人並み外れた人ばかり。その視点はなかった。目から鱗。
そして家族との台所の話はまさしく友田さんの説明通りで、ここまできちんと解説した書評はなかったのではないでしょうか。最高に素晴らしい!

・「しんぶん赤旗」2017年9月17日(日)9面に木村朗子さんの『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』書評が掲載されました。
「レイシストとは何か、それは経済的収奪を隠すために、他者を抽象し、権力の強奪を正当化するものだ」。ヘイトスピーチが世界中で横行するのはそんなからくりだったのだ。その経済収奪の権化がTPPである。前作『ひょうすべの国』がTPP反対のプラカードだったとすれば、本作が描き出すのは戦争やTPPによって脅かされる弱者である。それは病院にかかったり、保護した猫の世話をしたりしながら暮らすごく普通の人の姿である。
なるほど、前作と比較して本作が描いているのは弱者(といっても一般庶民そのものですよね)。

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