『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』感想リンク集

笙野頼子『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』講談社より7/31に発売されました。

講談社公式サイトのページ;『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』笙野頼子
装幀はミルキィ・イソベ+安倍晴美。裏表紙の帯はあたかも雑司ヶ谷猫軍団7匹がSNSしてるみたい。
電子書籍は9月22日より配信。Kindle版は1674円iBook版は1700円

9/27より新刊「猫キッチン荒神」に入っている読者アンケートハガキで応募すると、先着10名限定で著者謹製ギドウポストカードプレゼント。
「猫キッチン荒神」ポスカプレゼント&著者近況報告コメント

著書インタビュー

しんぶん赤旗10月8日号29面「読書のページ」欄に『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』著書インタビューが掲載されました。
  赤旗日曜版10/8に「猫キッチン荒神」著者インタビュー

ブログの感想

さっそく馬場さんに感想がアップされてます。
『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』(笙野頼子):馬場秀和ブログ
 ネオリベと経済搾取、性暴力と差別とヘイト、それらが絡み合って一体化して基層となっている日本の姿を書いた『ひょうすべの国』。自身の生きにくさ、猫との出会いと別れを書いた『猫道』。本書ではついにそれらが合流して、小さな「私」を離れることなく神視点で世界をとらえる「私小説」へと飛躍してゆきます。
まさにまさに。ひょうすべ+猫道+金毘羅が合わさった小説です。

笙野頼子「さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神」 : phantasmagoria
ここで繰り返し語られるのは「見えなかったものが見えてくる」ということ。自身の病気を知り、ほんとうのルーツを知ったことで、過去は塗り替えられていく。これまで何度も語られてきた――もちろん本作でも――政治家たち、あるいは人喰いたちによる「見えないものはないことと同じ」「だから奪って食ってなかったことにしてもいい」というような論調。しかし作家がこうして「見えなかったものを見ようとする」ことで、隠されようとしていた欺瞞は暴けるということが証明されているのではないか。
うさぎやさんの感想。なるほど、様々なエピソードに「見えなかったものが見える」という共通点があるのですね。

Instagram「笙野頼子、新刊『さあ、文学で戦争を止めよう…」
石川雅之さんのレビュー。「自分自身の病と来歴、飼い猫たちの来し方と終焉等々を、話法、時制ともに自在に描出しながら、そうした私世界を脅かす、今ここにある「戦前」の実相と恐怖を鮮烈に語りつくした身辺雑記。」と見事に内容をまとめています。


まさにその通りです。キッチンの自炊がレジスタンスとなり、その考えのバックボーンとして親との思い出話が登場するのです。

書評

・群像2017年9月号
他者への想像力の大事さ(『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』笙野頼子)木村紅美
公式サイトに全文アップされています。
これまで作者が思考してきたさまざまな要素がぶち込まれ、響きあう本書は、憤りの渦巻くカオスのようでありながら、この文学の基本であろう他者への想像力の大事さに貫かれ、誇り高く光り輝いている。
まさに、政治・経済・過去・現在・未来の予想など様々な要素を盛り込みながらも、過去作よりさらにパワフル、さらに読みやすくなっていますよね。

・GINZA 2017年9月号
GINZA CULTURE CLUBにて木村綾子さんのブックワームの部屋 今月読みたい珠玉の3冊に、『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』が紹介されています。
〈蓄えよ、冷凍せよ、そして資本主義から逃走せよ〉社会状況と生活とが直結する台所からの訴えに、危機迫る日本の現状があぶり出される。
端的に内容をまとめ「千とプラトー」路線も触れている紹介文はgoodJobです。

・日本経済新聞2017年8月31日夕刊 文化16面「目利きが選ぶ3冊」に『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』が紹介されています。
 愛猫のために戦争を止めなければ。でもどうやって? 小説家は筆を執る。目の前の現実を描くために。
止められるかどうかよりも、止めようともしない方が嫌。笙野さんの声に耳を傾ける。
批評家・陣野俊史さんより読むべしの星4つ頂きました。

・週刊読書人2017年9月22日号(3207号)に友田健太郎さんの『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』書評が掲載、週刊読書人ウェブに公開されています。
友田健太郎「静謐な印象の読後感 多くの女性たちに送る連帯のあいさつ」|週刊読書人ウェブ
多くの女性が台所で過ごした時間、積み重ねてきた思いは、数字に換算することはできない。だからこそ作者は、台所をグローバル資本主義への抵抗の拠点として位置づける。それは私的な領域に封じ込められて生きる多くの女性たちに作者が送る連帯のあいさつなのだ。
なぜ台所で自炊し執筆するのがカウンターになるのか、丁寧に解説しています。素晴らしい!

・しんぶん赤旗2017年9月17日に木村朗子さんの『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』書評が掲載されました。
「レイシストとは何か、それは経済的収奪を隠すために、他者を抽象し、権力の強奪を正当化するものだ」。ヘイトスピーチが世界中で横行するのはそんなからくりだったのだ。その経済収奪の権化がTPPである。前作『ひょうすべの国』がTPP反対のプラカードだったとすれば、本作が描き出すのは戦争やTPPによって脅かされる弱者である。それは病院にかかったり、保護した猫の世話をしたりしながら暮らすごく普通の人の姿である。

・岡和田晃『反ヘイト・反新自由主義の批評精神』に『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』書評が掲載されました。
エピソードの中では、二〇一五年、三重県志摩市が私企業による海女の卑猥な萌えキャラ化を「公認」したことへの言及に着目したい著者は反対署名に参加したことでネット右翼らに「たかられ」た。その経験を通し、文壇の論争で体感した、生きた人間を平面化する類の「二次元評論」が、広く世間に浸透していることを確認する。そして環太平洋連帯協定(TPP)による植民地的な収奪を危惧する著者は、「性暴力と経済収奪、ヘイトスピーチはまったく三位一体」という認識に到達する。
収奪する側の論理は同じなんですよね。

ちょっと新作の情報

本作は「群像」2017年4月号掲載の長編小説に最新の世界情勢を加筆し、書き下ろしの「口上」と「後書き、と--文学部にも読みやすい資料少し、お勧め」、さらに飼猫達などの写真16点まで収録されています。288pで厚さ2.5cmもある。分厚い一冊です!
・2014年冬から2016年末までの金毘羅の身辺雑記。
・秘密保護法反対デモに参加、安全保障関連法案に反対署名や「碧志摩メグ」撤回署名、3/6銀座サイレントカウンターデモ参加された話など。
・飼い猫ギドウの近況、伴侶猫ドーラがいかに飼主思いであったか振り返る。
・なぜ自炊して蓄えるのが好きか、台所での家族の話。
・TPPは流れたが日米日欧FTA、RCEP、TiSAがきてるで!
というのが大雑把なあらすじで、署名などはブログで紹介しましたね。
安全保障関連法案に反対する立教人の会に
早稲田文学2015年秋号「安全保障関連法案とその採決について」アンケート
「碧志摩メグ」志摩市公認撤回署名活動に賛同コメント
#0306銀座サイレントカウンター - Togetterまとめ

「猫キッチン荒神」のサブタイトル通り、本作は三年ぶりの小説神変理層夢経シリーズの第三章にあたります。
この猫荒神モノはドゥルーズ『千のプラトー』を小説化する連作で、全6部予定。
番外編「猫トイレット荒神」2013
第一章『猫ダンジョン荒神』2012
第ニ章『猫キャンパス荒神』2014
第三章『猫キッチン荒神』←イマココ
第四章「猫クロゼット荒神」
第五章「猫シンデレラ荒神」
前作『猫キャンパス荒神』で大学のお勤めしてた主人公は、本作では勤め終えて家のキッチンで語られてるわけです。
私の病に、新しく希望のあるデータが出ているのをネットで見つけ、主治医に聞いてみた。私は長生きできるようだp279
これは最大のビッグニュース!スピノザにも挑戦できますね。

(余談ですが、単行本の帯の情報量が新作ごとに増えている気がします。全部埋め込めるデザイナーさんの手腕はお見事。ちなみに帯の文はいつも著者謹製です。)

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