「文藝」2016年冬号に中編「人喰いの国」


10月7日発売の「文藝」2016年冬号に、笙野頼子さんの中編小説「人喰いの国」が掲載されています。
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309979052/
本作は「ひょうすべの嫁」「ひょうすべの菓子」「ひょうすべの約束」「おばあちゃんのシラバス」に続くひょうすべシリーズ五作目で完結編。150枚。

埴輪詩歌(あゆむ)が火星人落語家の木綿造と出会い、木綿助といぶきを育てるなか国名がだいにっほんに改名され、兄がみたこに入会し妹は見習いになって…「だいにっほん三部作」をお読みの方はご存知の展開になっていきます。
前作はにっほんでの持病持ちの生きづらさを描いていましたが、本作は女性の話。
近未来国にっほんがTPPに批准してIMFの経済政策でグローバル企業に搾取される社会となり、庶民は少女以外就職できず、自営業はフランチャイズでなければ難しく、謎の特許料に苦しむ羽目に。火星人は遊郭で遊女または職員ヤリテとして働くしかない状況に。
では富裕層やエリート女性なら安泰かと思えば、中年になり若さを失うと、ひょうすべと共に女性を虐める側にまわらないと生き残れないため、イカフェミ化するという。
「だいにっほん三部作」では描かれなかった火星人少女遊郭のブラックすぎる悲惨労働、ヤリテ女性も加わってエセ平等主義による女性への過酷な抑圧も描かれます。ネットで話題になった時事ネタもちょいちょい入ってたり。

馬場秀和ブログにさっそく感想がアップされています。素早い!
『人喰いの国(「文藝」2016年冬号掲載)』(笙野頼子)
季刊「未来」に後藤明生論を連載中の東條慎生さんがあらすじ&感想書かれています。
笙野頼子「人喰いの国」 Close to the Wall
内容が端的にまとめられてわかりやすいです。

それと10月9日twitter河出書房新社の文藝アカウントで笙野頼子さんのコメントがツイートされました。
「文藝」2016年冬号掲載「人喰いの国」に寄せて、笙野頼子さんからのコメントです!
“TPP反対、悪夢のひょうすべシリーズ、最終回「人喰いの国」。4年前始めた連作の完結発表が、皮肉にもその批准を論ずる、臨時国会の最中とは。この瀬戸際も国民の多くが自国の危機を知らない!政府の悪巧み?国民無知?いいえ大本営様の「ペンのお力」!腑抜け報道と隠蔽放送の罠を抜けたい!
表現の自由?それはただ痴漢まがいの広告表現だけ?脱法選挙で蘇ったヘイトゾンビだけ?高江を機動隊に弾圧させ、総理は他国に血税をばらまく。自国の子を飢えさせ、年寄りの年金をバクチでする。そして国民皆殺の仕上げTPP!その自称は「自由貿易協定」その実は、悪魔への白紙委任状
戦争はつけあわせ原発は召使のTPP、作中では学校給食から国民皆保険まで喰われた後、5度の戦争、生まれぬ赤子、飯に毒、突然死の年寄り、農家も沖縄も商店も消え、賃金は激減未成年債務奴隷。年金共済、保険、水道の壊滅。外資100パーのマスコミで報道も芸術もネットも死ぬ。国連が助けない。
前作引用「病人殺すな赤ちゃん消すな田畑無くすな奴隷になるな」「TPP通れば人喰い通る」「TPP流せ憲法戻せ」。IMFは、地球600社世界企業は、殺す気か?人類を?「こども、いのち、くすり、ことば、すべて人喰いのえじき」、中野剛志氏堤未果氏山田正彦氏が資料の「放送禁止」文学”
なお、本作を中核とした長篇単行本『ひょうすべの国』は11月刊行の予定で準備中。現代社会に亀裂を穿つ衝撃作!お楽しみに!!
https://twitter.com/kawade_bungei/status/785083548541657088
https://twitter.com/kawade_bungei/status/785083653537669120
https://twitter.com/kawade_bungei/status/785083710349582336
https://twitter.com/kawade_bungei/status/785083901123321856
https://twitter.com/kawade_bungei/status/785083946841219073
https://twitter.com/kawade_bungei/status/785084057814114305
Amazonによると『ひょうすべの国』は11月29日発売予定。
「本作を中核とした長篇」ということは加筆されるのかも、楽しみですね。

「人喰いの国」の中で、元農林水産大臣の新書がソースと書かれてましたが、やはり山田正彦『TPP秘密交渉の正体』 竹書房新書のことだったのですね。
8月に出た『アメリカも批准できないTPP協定の内容は、こうだった!』も気になるところ。
堤未果・中野剛志の書籍ってどの本が資料なのだろ、『TPP亡国論』や『TPP 黒い条約』あたりかな。『ひょうすべの国』発売までに読んでみようと思います。

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