文藝2016年秋号に短編「おばあちゃんのシラバス」


7/7発売の「文藝」2016年秋季号に笙野頼子さんの短編「おばあちゃんのシラバス」が掲載されています。
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309978864/
「おばあちゃんのシラバス」は、2012年冬号「ひょうすべの嫁」と2013年春号「ひょうすべの菓子」2016年夏季号「ひょうすべの約束」につづくシリーズ四作目。
前作の「ひょうすべの約束」は、グローバル企業に支配されTPP批准した日本の十数年後を新自由主義社会「にっほん」(とウラミズモ)の世界として描くディストピア小説。その主人公埴輪詩歌がウラミズモに亡命できなかった話でした。今作は彼女とその祖母埴輪豊子の話です。
前作にもちょいちょい出てきた膠原病のおばあちゃん、実は薬で症状を抑えながら大学の非常勤講師として40年働いていたそうです。
主人公は高校三年から1年間、祖母の介護をしながら家庭教師をうける。
6年間教えて修士までの学問を学ぶ本格教育で、最初の一年はその概要を教える形。
それ自体がシラバスみたいなものってことさね、つまり何を習うかを教えるのさ
政治学はお家でミクロ政治学、ていうよりかどうしてこんな時代になったかを自分の体験からせめて理解しようよ。だけど今年はともかくシラバスの一年ですp427
なぜ熱心に教えたかというと、どうして人喰い社会になったか理解できる大人に育てるため。
しかし持病抑える薬の価格がTPPで高騰し薬が買えなくなり、祖母は一年で亡くなってしまう。
豊子が死ぬとその娘で詩歌の母でもある埴輪ひるめは、ずっと冷静だったはずがふいに狂的に泣き喚いた、おばあちゃんを殺したのはお前だと自分の娘の詩歌を責め、殴りかかった。p424
この場面が辛すぎる。火星人遊郭で働かなかったから親が死んだと娘を責めているのですよ。本当はTPPで医療が高額化しまともな治療を受けられなくなったためだし、児童労働を強制する社会そのものがおかしいはず。なのにそれがわからないと子を責める親になってしまう。仮に子を売って祖母を生かしたとしても、今度は母親なのに子を犠牲にした事実に苦しむ事になるのでは。
子か親かどちらかを売らないと生きていけないひょうすべ社会。どちらを選んでも地獄、恐ろしすぎる。ぞーん。

発売日にもう馬場秀和さんの感想がアップされています。内容がわかりやすくまとめられてて素晴らしい。
『おばあちゃんのシラバス(「文藝」2016年秋号掲載)』(笙野頼子):馬場秀和ブログ
そうそう、最後のページに(参考文献は単行本刊行時に)と書かれているのです。

追記)kingさんもひょうすべシリーズの感想アップされてます。
笙野頼子「ひょうすべの約束」「おばあちゃんのシラバス」その他 - Close to the Wall
「場部美ちゃん」って「バブみ」からきてるらしいっす。火星人少女遊郭のキモさが際立ちますなー。

ひょうすべシリーズをまとめた『ひょうすべの国』は秋ごろ刊行予定だとか。楽しみですね!

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