毎日新聞2010年2月18日に「二百回忌」
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毎日新聞2010年2月18日朝刊の17面
「死という鏡─現代小説を読む─」第42回に
笙野頼子「二百回忌」が取りあげられています。
『笙野頼子三冠小説集 (河出文庫)』の書影つき。
著者は三輪太郎さん。作家兼文芸評論家。
ヴェトナムの古都フエが河によって生者の街と死者の街に別れている話から、
生と死の二項対立、その対立によって死を鏡として生を映し出ている、
「二百回忌」は「奇想天外、痛快無比な鏡」と紹介されます。
宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』に先立つこと七年、著者はヤオヨロズのドンチャン騒ぎ、神仏習合ならぬ生死習合の大祝祭を描きました。
二百回忌という祭りに反射されるカニデシの日常は、とことん干からびて、退屈で、出口がない。
近代とは、一面で、祭りと日常の境を溶かしてゆく過程でしたが、生死の習合は日常からかたくなに排除されました。
生死の習合が排除された日常は干からびている、と。
伊藤計劃『ハーモニー』に描かれていたように、死を排除した生活は単調で窮屈になるのだろうか。