「人の道 御三神」後篇の感想

笙野頼子の最新小説「人の道 御三神――人の道御三神といろはにブロガーズ後篇
おもしろかったっすね~。遅まきながら感想です。
ちなみに前編のあらすじはこちら

「御三神は、ネタブログを許さない」

御三神 後篇は、いろはにブロガーズの話から始まります。
いろはにブロガーズ。それは御三神の公式サイトのリンク集です。
「三姉妹」のブログをいろは順にリンクしています。
リンク先は「お隣ブログ」になるので、実際にブログ主の「お隣」まで行き
隣人として生活を共にされます。(ストーカー?)
そのときブログに偽りがあると分かれば――罰します
ブログ上に事実をバラされ、写真を晒されるのです。
嘘はなくても、いいかげんな三姉妹ブログは書き換えられるハメに。
しかし、よきブログは祝福をうけます。
御三神のようにほぞぼそと生き延びてきたGS演歌やコモドドラゴン・いたこ達、
血のつながりはなくとも健気にいきる三姉妹にも福がさずけられます。
それが本人達にとっても福かどうかはわかりませんが、結果的に全てのブログがストップ。
顕彰されたところも無視されたブログもすべて更新停止しています。

ブログに嘘を書いたら罰される

まじこえ――。
私のところに来てほしくないな。
そういえばウチの両隣は空室だったな…、御三神のお隣ブログにされたら速攻住める。こわっ。
でも三姉妹のブログじゃないから対象外だ。
それ以前に小説の中の話、フィクションなんだから現実にはありえない。
なのに毎日新聞の笙野頼子インタビュー記事を勝手に掲載したら罰されるだろうな、とか思っている。

なんか子どもの時に「雷様にへそを取られるぞ」と脅された時と同じ。
「嘘つくと閻魔大王に舌を抜かれる」「死んだ後地獄に堕ちる」みたいな事もいわれた。
本当に地獄があるわけないじゃんとバカにしつつも、
いざ雷がなると「へそを取られる」と急に怖くなったり、
地獄に堕ちたらどうしようと一瞬想像してしまう。
現実にはありえないと分かっていても、ふと頭をよぎるのだ。
そんな風に「嘘を書いたら御三神に罰される」と刷り込まれてしまった。
ようするに私は御三神の凶神ぶりにすっかり怯えていて、
ネットの善悪を御三神を基準にして考えるようになっているのだ。

ネットは自由に書けてなんでも簡単にコピーできる。
いいことも悪いこともネットでは気軽にできる。だから善悪の判断がゆるくなりがち。
法律で禁止されているからといって、社会的悪とは限らないし。
善悪は自分で判断する必要がある。
ひとりパソコンの前で、自分の欲望と利害と法律と善悪を考えてぐるぐるするより、
人の道御三神ならどう思われるだろうと神と共に考えるほうが楽だし、それでいいか。
そんな風に考えている時点で御三神にハマって(感染?)いるのかもしれません。



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